オオスズメバチ Vespa mandarinia | ||||
作成者:鈴木雅大 作成日:2012年8月5日(2022年9月17日更新) | ||||
オオスズメバチ(大雀蜂,英名:Asian giant hornet, Japanese giant hornet) | ||||
Vespa mandarinia Smith, 1852 | ||||
動物界(Kingdom Animalia),左右相称動物亜界(Subkingdom Bilateralia),旧口動物(前口動物)下界(Infrakingdom Protostomia),脱皮動物上門(Superphylum Ecdysozoa),節足動物門(Phylum Arthropoda),汎甲殻亜門(Superphylum Pancrustacea),六脚上綱(Superclass Hexapoda),昆虫綱(Class Insecta),有翅亜綱(Subclass Pterygota),新翅下綱(Infraclass Neoptera),完全変態上目(Superorder Holometabola),ハチ(膜翅)目(Order Hymenoptera),ハチ(細腰)亜目(Suborder Apocrita),スズメバチ上科(Superfamily Vespoidea),スズメバチ科(Family Vespidae),スズメバチ亜科(Subfamily Vespinae),スズメバチ属(Genus Vespa) | ||||
撮影地:埼玉県 川越市 鯨井;撮影日:2012年7月21日;撮影者:鈴木雅大 | ||||
世界最大級のスズメバチです(注)。大きさといいビジュアルといい,危険生物としての説得力に余りある蜂です。個人的には,昆虫の中で最も好きな種です。ピントの合った写真を撮りたかったのですが,接近したところカチカチと顎を鳴らして威嚇されたため,断念しました。
注:2011年にインドネシアで発見され,Kimsey & Ohl (2012) によって新種記載されたMegalara garudaが「世界最大のスズメバチ」と紹介された事がありますが,M. garudaはギングチバチ科(Crabronidae)の蜂でスズメバチとは科の階級で異なる仲間です。 |
||||
オオスズメバチの捕獲 | ||||
撮影地:兵庫県 淡路市 岩屋(淡路島);撮影日:2017年9月3日;撮影者:鈴木雅大 | ||||
2017年夏は職場でキイロスズメバチ(Vespa simillima xanthoptera)騒動があり,スズメバチに対してとても神経質になった年でした。そんな中,淡路島のため池で学生実習を行う許可を頂くため,ご挨拶に伺った田主の方からオオスズメバチの簡単な捕獲方法を教わりました。その方は養蜂家で,ニホンミツバチ(Apis cerana japonica)の巣箱を何箱も管理されておられました。ニホンミツバチの巣箱や解体後の蜜を求めてオオスズメバチが絶えずやってくるそうで,学生実習における安全対策の参考になると思い,オオスズメバチが集まってくる様子を観察させて頂きました。はたして蜜が付いたバットには,オオスズメバチが何匹も集まってきていました。驚いたことに蜜を集めに来るハチ達は近くにいる人間達に全く関心を示さず,ある方向(おそらく巣がある方向)から1, 2分おきに飛んできては帰っていきます。田主の方は一時期,集まってくるオオスズメバチを捕虫網で捕まえ,一升瓶一杯にして出荷したことがあるそうで(注),何匹か捕獲の実演をして頂きました。といっても蜜に集まってきたスズメバチをただ網で捕獲し,ピンセットでつまんで瓶に入れるだけのことで,スズメバチの方もいとも簡単に捕まっていました。「蜜を採りに来るハチは『攻撃しろ』という命令を受けていないから攻撃性が低く,今までこのやり方で人に向かって攻撃して来るハチは500匹に1匹いるかいないかだった」とのことでした。スズメバチはとにかく人に襲い掛かってくるものだと思っていましたが,意外な習性を勉強させて頂きました。ただし,樹液に集まってきたスズメバチが人を攻撃した例は多々あり,餌場によっては攻撃的になることも多いようです。著者も樹液を集めているオオスズメバチの写真を撮ろうと近寄った際,威嚇されたことがあります。餌場もしくは餌となる対象によってオオスズメバチの行動や攻撃性に違いがあるのかもしれません。これを機に生物学としてのスズメバチを勉強してみようと思いました。
注.スズメバチの毒液は薬用になることがあり,割と良い値段で売れたそうです。 |
||||
撮影地:兵庫県 淡路市 岩屋(淡路島);撮影日:2015年9月28日;撮影者:鈴木雅大 | ||||
実験中のセイヨウミツバチ(Apis mellifera)の巣箱に来襲したオオスズメバチです。巣箱を守るため,実験を行っている先生方が網で捕まえ,駆除したものです。斥候の役割とみられ,放置すると大群で襲ってくるそうです。巣箱の近くには退治されたスズメバチの死骸が数日で10数匹を超えていました。ハチの研究者の実験は命がけだと思いました。 | ||||
オオスズメバチに襲撃されたセイヨウミツバチの巣箱 | ||||
撮影地:兵庫県 淡路市 岩屋(淡路島);撮影日:2022年9月14日;撮影者:鈴木雅大 | ||||
オオスズメバチに襲撃されたセイヨウミツバチ(Apis mellifera)の巣箱です。朝8時半頃,斥候と思われるオオスズメバチが巣箱の周辺を飛び回っていました。9時過ぎ位に見てみると,数匹のオオスズメバチによる襲撃が始まっておりました。襲撃は数時間程度で終了し,巣箱の下の側溝にはセイヨウミツバチの死骸が積もっておりました。 | ||||
参考文献 | ||||
Kimsey, L. and Ohl, M. 2012. Megalara garuda, a new genus and species of larrine wasps from Indonesia (Larrinae, Crabronidae, Hymenoptera). ZooKeys 177: 49-57. | ||||
永幡嘉之 文・写真.奥山清市 写真.2017. くらべてわかる昆虫.143 pp. 山と渓谷社,東京. | ||||
NPO法人 武蔵野自然塾 編.2017. 危険生物ファーストエイドハンドブック 陸編.132 pp. 文一総合出版,東京. | ||||
篠永 哲・野口玉雄 2013. フィールドベスト図鑑 vol.17. 危険・有毒生物.256 pp. 学研教育出版,東京. | ||||
>写真で見る生物の系統と分類 >真核生物ドメイン >スーパーグループ オピストコンタ >動物界 >脱皮動物上門 >節足動物門 >汎甲殻亜門 >昆虫綱 >ハチ(膜翅)目 >スズメバチ上科 | ||||
「生きもの好きの語る自然誌」のトップに戻る | ||||
© 2012 Masahiro Suzuki |