ボタンアオサ(遠藤 1911)
Ulva conglobata Kjellman 1897: 10. pl. 2, figs 1-7. pl. 3, figs. 9-14.
 
掲載情報
岡村 1918: 58. pl. 165, figs. 1-10; 1936: 9; 瀬川 1956: 4, pl. 2-12; 吉田 1998: 39.
 
Syntype localities: Yokohama; Goto; Amakusa (横浜;五島;天草)
Type specimen: unknown?
 
佐渡島における分布:矢島(this study)。
日本における分布:本州太平洋沿岸中・南部,九州,南西諸島(吉田 1998より)。
世界における分布:韓国,中国,台湾,マレーシア,インドで報告されています(Guiry & Guiry 2010 Algaebaseより)。
 
 

押し葉標本(採集地:新潟県 佐渡郡 小木町 矢島(現 佐渡市 小木 矢島);採集日:2003年7月25日)

 
 高潮線付近の岩上に生育します。体は高さ2-6 (10) cm,仮根糸から成る小さい盤状の付着器を持ちます。葉状,膜質,円形で縁辺は強く波打ち,あたかも牡丹の花のように見えます。生時は鮮緑色。
 
体縁辺部表面観:細胞は不規則に並びます。細胞は四角形又は多角形で角は丸い,長さ9-16 µm, 幅7-12 µm。この図では葉緑体を示していませんが,各細胞に板状の葉緑体を1個含みます。葉緑体は1個のピレノイドを含みます(矢頭)。
 
体横断面(縁辺部(上)と体下部(下)):体は2層の細胞層から成ります。片側の細胞層は反対側の細胞層よりも細胞が大きい傾向があります。体縁辺部で厚さ34-39 µm,体下部にて厚さ38-50 µm。
 
Remarks
 平岡・嶌田 (2004) は,ボタンアオサ(Ulva conglobata)をリボンアオサ(U. fasciata)やアナアオサ(U. pertusa)の生育形の一つと考えています。著者も,潮間帯上部近くに生育するアナアオサが縁辺が縮れて牡丹状になっている様子や,リボンアオサは成熟して遊走子あるいは雌雄の配偶子を放出すると,線状だった葉状部がアナアオサのように幅広くなったり,ボタンアオサのように牡丹状になったりする様子を確かめた事があり,リボンアオサやアナアオサがボタンアオサと混同される例は多いと考えています。ここでは,横断面に置いて体が厚さ100 µm未満である事と,岡村(1918)が示しているように2層の細胞の大きさが内側と外側とで異なるという特徴からボタンアオサと同定しました。タイプ標本の所在が分からないか存在しないと考えられる事と,タイプ産地が横浜,五島,天草のいずれかとされる事から,Ulva conglobataという種の実体を明らかにするのは難しいと考えられます。実体不明ではありますが,岡村(1918)が挙げた特徴は分類学的特徴と成り得ると考えられるため,ここではボタンアオサを独立の種として扱っています。

 佐渡島では,潮間帯上部に群落が見られますが,これが初報告です。

 
参考文献
 
Guiry, M. D. and Guiry, G. M. 2010. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. http://www.algaebase.org; searched on 22 October 2010.
 
平岡雅規・嶌田 智 2004. アオサ類・アオノリ類 in 大野正夫編著 有用海藻誌 内田老鶴圃,東京 596 pp.
 
Kjellman, F. R. 1897. Marina Chlorophyceer fran Japan. Bihang til Kongliga Svenska Vetenskaps-Akademiens Handlingar Afd. 3. 23: 1-44.
 
岡村金太郎 1916-1923. 日本海藻図譜 第4巻. *自費出版.
 
岡村金太郎 1936. 日本海藻誌. 内田老鶴圃, 東京.
 
瀬川宗吉 1956. 原色日本海藻図鑑. 保育社,大阪.
 
吉田忠生 1998. 新日本海藻誌 1222 pp. 内田老鶴圃, 東京.
 
遠藤吉三郎 1911. 海産植物学. 博文館,東京.
 

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